blog»ブランド・マーケティング»【後編】SNS広告 × LP改善でCVR最大化!LPのA/Bテストで成果を出す方法とは?
2025年07月24日
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前回はSNS広告クリエイティブのA/Bテストについてご紹介しました。今回はその遷移先となるLP(ランディングページ)のA/Bテストについて解説します。
「アクセスはあるのに売れない」「改善のポイントがわからない」——そんな課題を感じているマーケターやWeb担当者も多いのではないでしょうか。
LPの成果を高めるには、“なんとなく”ではなく仮説に基づいたA/Bテストが重要です。ただし、仮説の立て方や優先順位のつけ方に悩み、実行に移せないケースも少なくありません。
本記事では、A/Bテストを成功させるための基本ルールとして、
を体系的にご紹介します。
A/Bテストは、Webサイトや広告の改善を科学的に進めるための重要な手法です。その効果を最大限に発揮するには、明確な仮説に基づいてテストを行い、優先順位を適切に設定する必要があります。
まずは、現在抱えている問題に対して「なぜそうなっているのか?」という仮説を立てることが重要です。たとえば、
この仮説を検証するために、「商品説明のページに送料について、返品・交換ポリシーについて明記する」という改善案を用意し、従来のページと比較するA/Bテストを実施します。その結果、変更後のページで購入率が向上した場合、この施策が有効であると判断されます。
このように、「問題→事実→仮説→施策」の流れで整理することで、施策の背景や目的が明確になり、チーム内でも納得感のあるA/Bテスト設計になります。
A/Bテストのアイデアが複数ある場合、どの施策から着手すべきかを判断するために、「優先順位付け」が重要です。この際に活用されるのが、ICEやPIEといった評価フレームワークです。
ICEは施策のインパクト・実行のしやすさ・自信度を重視するため短期的に効果検証したい改善案の優先順位付けに適しています。
一方PIEはページの重要度・改善余地・訪問数に基づくため、どのページから改善すべきかを判断する際に有効です。
【ICEフレームワーク】
ICEは、以下の3つの指標をもとに各施策を1~10のスコアで評価し、その平均値を「ICEスコア」として算出します。
点数計算の一例:
このように、メインビジュアルの改善よりもCTAの改善のほうが、ICEスコアが高くなる傾向が見られます。もちろん一部には主観的な仮説も含まれていますが、「CTAの文言を変更する」といったテストは、優先的に実施することで効率的に成果が得られる可能性が高いと考えられます。
【PIEフレームワーク】
PIEも同様に、以下の観点から1~10でスコアをつけます。
💡客観性を保つために
これらのスコアは、どうしても主観的になりやすいため、各評価項目に対する具体的な基準(ガイドライン)をあらかじめ定めておくことが重要です。たとえば「Impact=8」とするならば、「仮に改善されればCVRが10%以上向上する可能性がある」など、スコア付けの共通認識を持つことで、判断のバラつきを防ぎます。
A/Bテストの優先順位をつける際には、ICEやPIEなどのフレームワークを使って効果や実行のしやすさを見極めることが重要です。
そのうえで、最初に着手すべき対象として多くのケースで高く評価されているのが「ファーストビュー(FV)」です。
FVはユーザーが最初に接触する情報であり、離脱率やCVRに与えるインパクトが非常に大きいため、出発点として推奨されることがよくあります。
まず最も優先すべきは、ページの読み込み速度やレイアウトの安定性といった、サイトの基本的なパフォーマンスです。
いかに優れたコンテンツを用意していても、表示が遅ければユーザーは離脱してしまい、内容を見てもらうことすら叶いません。また、スマートフォンやタブレットでのレスポンシブ対応が不十分でレイアウトが崩れていると、信頼感が損なわれ、離脱のリスクが一気に高まります。
ユーザーがどこから訪問しているかによって、求めている情報や期待する内容は異なります。
例えば、「ブランド名で検索して訪れるユーザー」は、すでにそのブランドにある程度の関心を持っており、信頼性や安心感を求めています。一方で、「サービス名や課題キーワードでリスティング広告から流入してくるユーザー」は、そのサービスが自分の課題をどう解決してくれるかに注目している可能性が高いです。
流入経路に応じて、コピーやデザインの訴求内容を調整することが重要です。
ファーストビューでは、その商品・サービスが誰向けで、どんな価値があるのかを一目で伝えることが重要です。
たとえば、以下のコピーを比較してみましょう。
どちらの方が、具体的な利用シーンやターゲットが想像できるでしょうか?
多くの方はBの方が「自分に関係がある」と感じやすく、結果として関心を引きやすくなるのではないでしょうか。
このように、具体的かつターゲットを明示したコピーを使用することによって広告の効果を最大化することにつながります。
ユーザーは、企業の主張よりも第三者による客観的な評価に信頼を寄せる傾向があります。
たとえば、以下のような情報はファーストビューに配置することで、信頼感と安心感を与える効果が期待できます。
特に初めてブランドに触れるユーザーに対しては、こうした客観的な裏付けがあるだけで、商品やサービスへの不安を軽減し、コンバージョンにつながる可能性が高まります。
ユーザーに気軽にアクションを起こしてもらうためには、「手軽さ」や「ユーザーメリットの大きさ」を明確に伝えることが重要です。
たとえば、「いつでもキャンセルOK」や「今すぐ無料ではじめる」など、ユーザーが心理的なハードルを感じずに行動できることを、CTA(Call to Action)を通じてしっかり訴求することで、CTR(クリック率)の向上につながる可能性があります。
LPには必要な情報だけを載せ、ユーザーが迷わずコンバージョンできる導線にすることが鉄則です。
A/Bテストでは、以下のような「削除テスト」も有効です。
💡導線にノイズが多すぎると、ユーザーは迷って離脱します。
フォームの使いづらさは、ユーザーの離脱ポイントになりやすい箇所です。そのため、改善をすることができれば効果が大きく出やすいポイントでもあるのです。
A/Bテストで改善すべきポイントは以下のとおりです:
特にBtoB領域やサービス申込型LPでは、フォーム改善=CVR改善に直結するケースが多いです。
A/Bテストを実施する際、「せっかくならたくさんのバリエーションを試した方が良いのでは?」と思う方も多いかもしれません。
しかし、テストパターンを増やしすぎると、かえって意思決定を誤るリスクが高まります。
たとえば「95%の有意水準(significance level)」でテストしている場合、5%の確率で誤検出(= 本当は差がないのに“ある”と判断してしまう)が起こる可能性があります。これを「アルファエラー(type I error)」と呼びます。
そして、テストするパターン数が多くなるほど、この誤検出が起こる確率は累積的に増加します。
これは「累積アルファエラー(cumulative alpha error)」と呼ばれ、たとえば10パターンを同時に比較すれば、少なくとも1つは偶然「良さそう」に見えるパターンが出てしまう可能性があるのです。
仮に5パターンでテストして、「AがCVR3.2%、Bが3.3%、Cが3.0%…」という結果になった場合、数値に大きな差がないと判断が難しくなり、かえって迷いが生じることがあります。
さらに、細かい差を見ようとして検証期間を長くすれば、テスト期間中にユーザー環境が変化して結果がブレるリスクも高くなります。
ブランドの認知度がまだ低いフェーズでは、「買って失敗したらどうしよう…」というユーザーの不安がコンバージョンの大きなハードルになります。
今回は、自社が日本市場展開の運営及び支援を行なっている、アパレル&シューズブランド「HAPPY NOCNOC(ハッピーノックノック)」の例をご紹介します。
こちらの事例は日本市場での立ち上げ初期において、購入前の心理的ハードルを可視化して取り除いたことで、CVRを46%改善できた施策です。
日本での展開を始めたばかりで、ブランド認知がまだ低く、
「もしサイズが合わなかったら?」「返品はできるのか?」といった購入前の不安が障壁になっていると考えられました。
不安を払拭するため、CTA(カートに入れる)のすぐ下に
「配送について」「返品・交換について」のリンクを設置したパターンを用意してテストを実施。
CVR(コンバージョン率)が46%も改善。
購入前の不安要素を目に見える形で取り除くことが、行動の後押しにつながったと考えられます。「良い商品であれば売れる」というだけでは、認知がないブランドにとっては十分ではありません。
購入の決断を後押しするためには、ユーザーの不安に先回りして寄り添う設計が欠かせません。
今回のように、返品や配送に関する情報をあえて明示するだけでも、安心感を与え、行動を促進する強力な一手となります。
LPで何を最初に伝えるか―これはコンバージョンに大きく影響します。今回ご紹介するのは、「夏向けの通気性」を主訴求としていたLPに対して、
ユーザーが実際に注目していた価値を優先的に伝えるよう改善したことで、CVRが大幅に向上した事例です。
LPのファーストビューでは、「夏でも快適に」というメッシュ素材の通気性を訴求するコピーを掲載していました。
一方で、「足の成長をサポートする」という商品の本質的な価値は、ページ下部にスクロールしないと見られない位置にありました。
ヒートマップ分析の結果、その部分にユーザーの注目が集まっており、実は多くの人が“足の成長サポート”に関心を持っていたことが分かりました。
「足の成長をサポートする」という訴求をLPの上部(ファーストビュー)に移動させ、テストを実施。
その結果、CVR(コンバージョン率)が104%パーセントも改善され、
ユーザーが本当に求めていた価値を最初に伝えることの重要性が裏付けられました。
ユーザーは「何となく涼しそう」よりも、「子どもの足の成長をサポートしたい」という本質的な安心感や価値を求めていたことが明確になりました。
ヒートマップなどのユーザーデータをもとに、どこに関心が集まっているかを見極め、ファーストビューに反映させることが成果を伸ばす鍵となります。
A/Bテストは、ユーザーの反応を“データ”で見極めながら改善を進めていくための、非常に有効な手段です。
本記事では、仮説の立て方からテストの優先順位付け、具体的な改善ポイントや成功事例までをご紹介してきました。
特に、ファーストビューやCTAなど、ユーザーの離脱や行動に直結する要素は、少しの改善でも大きな成果につながる可能性があります。
ただし、A/Bテストは「ただやれば成果が出る」ものではありません。仮説を持ち、ユーザー視点に立ち、優先順位を正しく見極めることが成功への鍵となります。
まずは、自社の課題やユーザーの行動を見直し、小さな仮説からでもテストを始めてみること。そこから得られる“リアルな気づき”が、次の一手を導き、成果へとつながっていきます。
ぜひ今回ご紹介した視点を参考に、継続的なテストと改善を通じて、コンバージョン率の最大化を目指していきましょう。